Ingress
Kubernetes v1.1
beta- バージョン名には
beta
がつきます(例:v2beta3
)。 - コードが十分にテストされているため、この機能は安全に有効化できます。デフォルトでも有効化されています。
- 今後も継続して、この機能は包括的にサポートされる見通しですが、細かい部分が変更になる場合があります。
- 今後のbeta版または安定版のリリースにおいては、オブジェクトのデータの形式や意味の両方あるいはいずれかについて、互換性のない変更が入る場合があります。その際は、次期バージョンへの移行手順も提供します。その移行にあたっては、APIオブジェクトの削除・改変・再作成が必要になる場合があります。特に改変には、多少の検討が必要になることがあります。また、それを適用する際には、この機能に依存するアプリケーションの一時停止が必要になる場合があります。
- 今後のリリースにおいて互換性のない変更が入る可能性があります。そのため、業務用途外の検証としてのみ利用が推奨されています。ただし、個別にアップグレード可能な環境が複数ある場合は、この制限事項の限りではありません。
- beta版の機能の積極的な試用とフィードバックにご協力をお願いします!一度beta版から安定版になると、それ以降は変更を加えることが困難になります。
クラスター内のServiceに対する外部からのアクセス(主にHTTP)を管理するAPIオブジェクトです。
Ingressは負荷分散、SSL終端、名前ベースの仮想ホスティングの機能を提供します。
- 用語
- Ingressとは何か
- Ingressを使用する上での前提条件
- Ingressリソース
- Ingressのタイプ
- Ingressの更新
- アベイラビリティーゾーンをまたいだ障害について
- 将来追加予定の内容
- Ingressの代替案
- 次の項目
用語
まずわかりやすくするために、このガイドでは次の用語を定義します。
ノード: Kubernetes内のワーカーマシンで、クラスターの一部です。
クラスター: Kubernetesによって管理されているコンテナ化されたアプリケーションを実行させるノードのセットです。この例や、多くのKubernetesによるデプロイでは、クラスター内のノードはパブリックインターネットとして公開されていません。
エッジルーター: クラスターでファイアウォールのポリシーを強制するルーターです。エッジルーターはクラウドプロバイダーやハードウェアの物理的な一部として管理されたゲートウェイとなります。
クラスターネットワーク: 物理的または論理的なリンクのセットで、Kubernetesのネットワークモデルによって、クラスター内でのコミュニケーションを司るものです。
Service: ラベルTags objects with identifying attributes that are meaningful and relevant to users. セレクターを使ったPodのセットを特定するKubernetes ServicePodの集合で実行されているアプリケーションをネットワークサービスとして公開する方法。 です。特に言及がない限り、Serviceはクラスターネットワーク内でのみ疎通可能な仮想IPを持つと想定されます。
Ingressとは何か
Ingressはクラスター外からクラスター内ServiceへのHTTPとHTTPSのルートを公開します。トラフィックのルーティングはIngressリソース上で定義されるルールによって制御されます。
internet
|
[ Ingress ]
--|-----|--
[ Services ]
IngressはServiceに対して、外部疎通できるURL、負荷分散トラフィック、SSL/TLS終端の機能や、名前ベースの仮想ホスティングを提供するように構成できます。Ingressコントローラーは通常はロードバランサーを使用してIngressの機能を実現しますが、エッジルーターや、追加のフロントエンドを構成してトラフィックの処理を支援することもできます。
Ingressは任意のポートやプロトコルを公開しません。HTTPやHTTPS以外のServiceをインターネットに公開するときは、Service.Type=NodePortやService.Type=LoadBalancerのServiceタイプを使用することが多いです。
Ingressを使用する上での前提条件
Ingressの機能を提供するためにIngressコントローラーを用意する必要があります。Ingressリソースを作成するのみでは何の効果もありません。
ingress-nginxのようなIngressコントローラーのデプロイが必要な場合があります。ユーザーはいくつかのIngressコントローラーの中から選択できます。
理想的には、全てのIngressコントローラーはリファレンスの仕様を満たすべきです。しかし実際には、いくつかのIngressコントローラーは微妙に異なる動作をします。
備考: Ingressコントローラーのドキュメントを確認して、選択する際の注意点について理解してください。
Ingressリソース
Ingressリソースの最小構成の例は下記のとおりです。
apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
kind: Ingress
metadata:
name: test-ingress
annotations:
nginx.ingress.kubernetes.io/rewrite-target: /
spec:
rules:
- http:
paths:
- path: /testpath
backend:
serviceName: test
servicePort: 80
他の全てのKubernetesリソースと同様に、IngressはapiVersion
、kind
やmetadata
フィールドが必要です。設定ファイルの利用に関する一般的な情報は、アプリケーションのデプロイ、コンテナーの設定、リソースの管理を参照してください。
Ingressでは、Ingressコントローラーに依存しているいくつかのオプションの設定をするためにアノテーションを使うことが多いです。その例としては、rewrite-targetアノテーションなどがあります。
Ingressコントローラーの種類が異なれば、サポートするアノテーションも異なります。サポートされているアノテーションについて学ぶために、ユーザーが使用するIngressコントローラーのドキュメントを確認してください。
Ingress Specは、ロードバランサーやプロキシーサーバーを設定するために必要な全ての情報を持っています。最も重要なものとして、外部からくる全てのリクエストに対して一致したルールのリストを含みます。IngressリソースはHTTPトラフィックに対してのルールのみサポートしています。
Ingressのルール
各HTTPルールは下記の情報を含みます。
- オプションで設定可能なホスト名。上記のリソースの例では、ホスト名が指定されていないと、そのルールは指定されたIPアドレスを経由する全てのインバウンドHTTPトラフィックに適用されます。ホスト名が指定されていると(例: foo.bar.com)、そのルールはホストに対して適用されます。
- パスのリスト(例:
/testpath
)。各パスにはserviceName
とservicePort
で定義されるバックエンドが関連づけられます。ロードバランサーがトラフィックを関連づけられたServiceに転送するために、外部からくるリクエストのホスト名とパスが条件と一致させる必要があります。 - Serviceドキュメントに書かれているように、バックエンドはServiceとポート名の組み合わせとなります。Ingressで設定されたホスト名とパスのルールに一致するHTTP(とHTTPS)のリクエストは、リスト内のバックエンドに対して送信されます。
Ingressコントローラーでは、デフォルトのバックエンドが設定されていることがあります。これはSpec内で指定されているパスに一致しないようなリクエストのためのバックエンドです。
デフォルトのバックエンド
ルールが設定されていないIngressは、全てのトラフィックをデフォルトのバックエンドに転送します。このデフォルトのバックエンドは、Ingressコントローラーのオプション設定であり、Ingressリソースでは指定されていません。
IngressオブジェクトでHTTPリクエストが1つもホスト名とパスの条件に一致しない時、そのトラフィックはデフォルトのバックエンドに転送されます。
Ingressのタイプ
単一ServiceのIngress
ユーザーは単一のServiceを公開できるという、Kubernetesのコンセプトがあります(Ingressの代替案を参照してください)。 また、Ingressでこれを実現できます。それはルールを設定せずにデフォルトのバックエンド を指定することにより可能です。
service/networking/ingress.yaml
|
---|
|
kubectl apply -f
を実行してIngressを作成し、その作成したIngressの状態を確認することができます。
kubectl get ingress test-ingress
NAME HOSTS ADDRESS PORTS AGE
test-ingress * 107.178.254.228 80 59s
107.178.254.228
はIngressコントローラーによって割り当てられたIPで、このIngressを利用するためのものです。
備考: IngressコントローラーとロードバランサーがIPアドレス割り当てるのに1、2分ほどかかります。この間、ADDRESSの情報は<pending>
となっているのを確認できます。
リクエストのシンプルなルーティング
ファンアウト設定では単一のIPアドレスのトラフィックを、リクエストされたHTTP URIに基づいて1つ以上のServiceに転送します。Ingressによって、ユーザーはロードバランサーの数を少なくできます。例えば、下記のように設定します。
foo.bar.com -> 178.91.123.132 -> / foo service1:4200
/ bar service2:8080
Ingressを下記のように設定します。
apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
kind: Ingress
metadata:
name: simple-fanout-example
annotations:
nginx.ingress.kubernetes.io/rewrite-target: /
spec:
rules:
- host: foo.bar.com
http:
paths:
- path: /foo
backend:
serviceName: service1
servicePort: 4200
- path: /bar
backend:
serviceName: service2
servicePort: 8080
Ingressをkubectl apply -f
によって作成したとき:
kubectl describe ingress simple-fanout-example
Name: simple-fanout-example
Namespace: default
Address: 178.91.123.132
Default backend: default-http-backend:80 (10.8.2.3:8080)
Rules:
Host Path Backends
---- ---- --------
foo.bar.com
/foo service1:4200 (10.8.0.90:4200)
/bar service2:8080 (10.8.0.91:8080)
Annotations:
nginx.ingress.kubernetes.io/rewrite-target: /
Events:
Type Reason Age From Message
---- ------ ---- ---- -------
Normal ADD 22s loadbalancer-controller default/test
IngressコントローラーはService(service1
、service2
)が存在する限り、Ingressの条件を満たす実装固有のロードバランサーを構築します。
構築が完了すると、ADDRESSフィールドでロードバランサーのアドレスを確認できます。
備考: ユーザーが使用しているIngressコントローラーに依存しますが、ユーザーはdefault-http-backendServiceの作成が必要な場合があります。
名前ベースの仮想ホスティング
名前ベースの仮想ホストは、HTTPトラフィックを同一のIPアドレスの複数のホスト名に転送することをサポートしています。
foo.bar.com --| |-> foo.bar.com service1:80
| 178.91.123.132 |
bar.foo.com --| |-> bar.foo.com service2:80
下記のIngress設定は、ロードバランサーに対して、Hostヘッダーに基づいてリクエストを転送するように指示するものです。
apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
kind: Ingress
metadata:
name: name-virtual-host-ingress
spec:
rules:
- host: foo.bar.com
http:
paths:
- backend:
serviceName: service1
servicePort: 80
- host: bar.foo.com
http:
paths:
- backend:
serviceName: service2
servicePort: 80
rules項目でのホストの設定がないIngressを作成すると、IngressコントローラーのIPアドレスに対するwebトラフィックは、要求されている名前ベースの仮想ホストなしにマッチさせることができます。
例えば、下記のIngressリソースはfirst.bar.com
に対するトラフィックをservice1
へ、second.foo.com
に対するトラフィックをservice2
へ、リクエストにおいてホスト名が指定されていない(リクエストヘッダーがないことを意味します)トラフィックはservice3
へ転送します。
apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
kind: Ingress
metadata:
name: name-virtual-host-ingress
spec:
rules:
- host: first.bar.com
http:
paths:
- backend:
serviceName: service1
servicePort: 80
- host: second.foo.com
http:
paths:
- backend:
serviceName: service2
servicePort: 80
- http:
paths:
- backend:
serviceName: service3
servicePort: 80
TLS
TLSの秘密鍵と証明書を含んだSecretStores sensitive information, such as passwords, OAuth tokens, and ssh keys.
を指定することにより、Ingressをセキュアにできます。現在Ingressは単一のTLSポートである443番ポートのみサポートし、TLS終端を行うことを想定しています。IngressのTLS設定のセクションで異なるホストを指定すると、それらのホストはSNI TLSエクステンション(IngressコントローラーがSNIをサポートしている場合)を介して指定されたホスト名に対し、同じポート上で多重化されます。TLSのSecretはtls.crt
とtls.key
というキーを含む必要があり、TLSを使用するための証明書と秘密鍵を含む値となります。下記が例となります。
apiVersion: v1
kind: Secret
metadata:
name: testsecret-tls
namespace: default
data:
tls.crt: base64 encoded cert
tls.key: base64 encoded key
type: kubernetes.io/tls
IngressでこのSecretを参照すると、クライアントとロードバランサー間の通信にTLSを使用するようIngressコントローラーに指示することになります。作成したTLS Secretは、sslexample.foo.com
の完全修飾ドメイン名(FQDN)とも呼ばれる共通名(CN)を含む証明書から作成したものであることを確認する必要があります。
apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
kind: Ingress
metadata:
name: tls-example-ingress
spec:
tls:
- hosts:
- sslexample.foo.com
secretName: testsecret-tls
rules:
- host: sslexample.foo.com
http:
paths:
- path: /
backend:
serviceName: service1
servicePort: 80
負荷分散
Ingressコントローラーは、負荷分散アルゴリズムやバックエンドの重みスキームなど、すべてのIngressに適用されるいくつかの負荷分散ポリシーの設定とともにブートストラップされます。発展した負荷分散のコンセプト(例: セッションの永続化、動的重み付けなど)はIngressによってサポートされていません。代わりに、それらの機能はService用のロードバランサーを介して利用できます。
Ingressによってヘルスチェックの機能が直接に公開されていない場合でも、Kubernetesにおいて、同等の機能を提供するReadiness Probeのようなコンセプトが存在することは注目に値します。コントローラーがどのようにヘルスチェックを行うかについては、コントローラーのドキュメントを参照してください(nginx、GCE)。
Ingressの更新
リソースを編集することで、既存のIngressに対して新しいホストを追加することができます。
kubectl describe ingress test
Name: test
Namespace: default
Address: 178.91.123.132
Default backend: default-http-backend:80 (10.8.2.3:8080)
Rules:
Host Path Backends
---- ---- --------
foo.bar.com
/foo service1:80 (10.8.0.90:80)
Annotations:
nginx.ingress.kubernetes.io/rewrite-target: /
Events:
Type Reason Age From Message
---- ------ ---- ---- -------
Normal ADD 35s loadbalancer-controller default/test
kubectl edit ingress test
このコマンドを実行すると既存の設定をYAMLフォーマットで編集するエディターが表示されます。新しいホストを追加するために、リソースを修正してください。
spec:
rules:
- host: foo.bar.com
http:
paths:
- backend:
serviceName: service1
servicePort: 80
path: /foo
- host: bar.baz.com
http:
paths:
- backend:
serviceName: service2
servicePort: 80
path: /foo
..
変更を保存した後、kubectlはAPIサーバー内のリソースを更新し、Ingressコントローラーに対してロードバランサーの再設定を指示します。
変更内容を確認してください。
kubectl describe ingress test
Name: test
Namespace: default
Address: 178.91.123.132
Default backend: default-http-backend:80 (10.8.2.3:8080)
Rules:
Host Path Backends
---- ---- --------
foo.bar.com
/foo service1:80 (10.8.0.90:80)
bar.baz.com
/foo service2:80 (10.8.0.91:80)
Annotations:
nginx.ingress.kubernetes.io/rewrite-target: /
Events:
Type Reason Age From Message
---- ------ ---- ---- -------
Normal ADD 45s loadbalancer-controller default/test
修正されたIngressのYAMLファイルに対してkubectl replace -f
を実行することで、同様の結果を得られます。
アベイラビリティーゾーンをまたいだ障害について
障害のあるドメインをまたいでトラフィックを分散する手法は、クラウドプロバイダーによって異なります。詳細に関して、Ingress コントローラーのドキュメントを参照してください。複数のクラスターにおいてIngressをデプロイする方法の詳細に関してはKubernetes Cluster Federationのドキュメントを参照してください。
将来追加予定の内容
Ingressと関連するリソースの今後の開発についてはSIG Networkで行われている議論を確認してください。様々なIngressコントローラーの開発についてはIngress リポジトリーを確認してください。
Ingressの代替案
Ingressリソースに直接関与しない複数の方法でServiceを公開できます。
下記の2つの使用を検討してください。 * Service.Type=LoadBalancer * Service.Type=NodePort
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